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万葉のラブソング(相聞歌)―
美人シンガー・ソングライターの作曲・歌唱付き!
(森島英一による額田王恋歌の万葉集歌詞作成)
シンガー・ソングライター 多田周子 万葉の世界を歌う
-多田周子さんのプロフィール-
兵庫県たつの市出身。京都芸術大学音楽部卒。卒業後オーストリアに留学。
童謡や唱歌を「歌い届ける日本の心」という思いを込め、日本のみならず世界との架け橋として活動中。2015年11月「風の中のクロニクル」でメジャーデビュー。2018年11月メジャー第二弾「なつかしゃや」をリリース。自作のオリジナル曲も多数リリース、高い評価を受けている。
「万葉Love Story」(額田王恋歌)
詩 森島英一 2021年7月
(1)今は去りし日 もの思い
君がみやこの 長となり
やまとを治め られしとき
宇治の川辺に 皆で行き
庵を立てし 愉しき日々を
~さてもやさても 皆の衆
めでたやめでた お祝いじゃ
我らが長の 皇子殿
我らが愛する お姫様
ご成婚のォ~ みぎりなり~
(2)御料地の野に わが君の
狩りするお姿 凛々しくて
すみれ花咲く 紫野
憧れつつに 立ち見れば
君の袖振る 野守の目あり
~さてもやさても 皆の衆
あまねくやまとに はやる歌
傷くも甘き 恋の歌
二人の君の はざまにて
揺れるまなざし ふるえる心~
(3)なにをか言わん 我が恋は
人の口の端 上るとも
汝こそ人妻 なりしとも
やまぬ心根 消えぬ愛
初瀬の早瀬 堪える岩なる
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(現代文による説明)
(1)昔のことがしきりに懐かしく思い出されます。
みやこのリーダーとなられた皇極女帝がやまとの国を治めれていた頃、宇治川の畔に皆で行き
仮の庵を萱で葺いて造り、楽しい日々を過ごしましたことを。
~さてもさても皆さん!
おめでたいことです、祝い事です!
われらの帝の皇子様と
われらが敬慕するお姫様の
ご成婚のみぎりとなりましたぞ~
(2)御料地で狩りをするあなたの凛々しいお姿が見えます。
私は菫の花が咲く野原に立ち、憧れの想いでお待ちしております。
私を目にしたあなたは周りに気兼ねなく駒の上から袖を振ってらっしゃる。
もうおよしなさいませ、野守がみとがめますよ。
~さてもさても、皆さん!
やまとの国で広く流行っている歌をご存知か。
切なくも甘い恋の歌を。
二人の大君に想われ悩む
美しき姫の揺れるまなざしとふるえる心を。
(3)何を言い訳しようぞ、我が恋につき。
たとえ人のうわさになろうとも
あなたが人妻であろうとも
わたしの恋心は終わることはないし、愛は消えない。
それは、初瀬川の急流に堪えて流されない岩のようなものだ。
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(注 釈)
額田王(ぬかたのおおきみ)は、大和朝廷歌壇の中心的存在と目された女流歌人で、その美貌とあいまって、人気が高く、当時の朝廷の二人の皇子(大海人皇子 = おおあまのおうじ = 後の天武天皇 と、その兄、中大兄皇子 = なかのおおえのおおじ = 後の天智天皇)に相次いで嫁ぎ、またその間、二人の皇子の恋のさやあても並行的にあった模様。
上記歌の(1)番は、二人の皇子の母、皇極天皇の宇治への行幸に従い、皇室家族と共に額田王も加わった際の思い出を歌ったもの。 (2)番は天智天皇の下に入った額田王と大海人皇子の密かな恋を額田自らが歌い、(3)番で皇子が返歌を送る形となっている。
これらの歌の解釈には諸説あり、宴会の席の余興に歌ったものとも言われるが、ここではラブ・ストーリーとして真面目にして密やかな歌に仕上げています。